0:00:00.000,0:00:02.000 宇宙は 0:00:02.000,0:00:04.000 実に広大です 0:00:04.000,0:00:07.000 私たちは銀河の1つ 天の川銀河にいます 0:00:07.000,0:00:10.000 天の川銀河には約1千億の星があります 0:00:10.000,0:00:12.000 カメラを空のどこかに向けて 0:00:12.000,0:00:14.000 シャッターを 0:00:14.000,0:00:16.000 開けたままにしておくだけで 0:00:16.000,0:00:19.000 カメラがハッブル宇宙望遠鏡に繋がっていればですが 0:00:19.000,0:00:21.000 このようなものが見えます 0:00:21.000,0:00:24.000 これらの小さな塊のそれぞれが 0:00:24.000,0:00:26.000 私たちの銀河系程の大きさの銀河で 0:00:26.000,0:00:29.000 1つの塊ごとに1千億の星があります 0:00:29.000,0:00:32.000 観測できる限りの宇宙には 0:00:32.000,0:00:34.000 大体1千億の銀河があります 0:00:34.000,0:00:36.000 覚える数字は「1千億」だけです 0:00:36.000,0:00:39.000 ビッグバンから現在の宇宙の年齢は 0:00:39.000,0:00:41.000 犬年齢で言う1千億年です 0:00:41.000,0:00:43.000 (笑) 0:00:43.000,0:00:46.000 宇宙での人間の身分が分かります 0:00:46.000,0:00:48.000 このような非常に美しい写真は 0:00:48.000,0:00:50.000 見とれるだけでもかまいません 0:00:50.000,0:00:53.000 銀河の写真などなかった頃に これを本当に楽しめるまで 0:00:53.000,0:00:56.000 アフリカ南部の草原にいた私たちの祖先を順応させ 0:00:56.000,0:00:58.000 進化させた進化の要因は 0:00:58.000,0:01:00.000 何だろうとよく考えます 0:01:00.000,0:01:02.000 でも同時に理解もしたいのです 0:01:02.000,0:01:06.000 宇宙学者として「なぜ宇宙はこうなのだ?」と聞きたいのです 0:01:06.000,0:01:09.000 大きなヒントの1つは宇宙が時とともに変化していることです 0:01:09.000,0:01:12.000 銀河の1つをとってその速度を測ると 0:01:12.000,0:01:14.000 私たちから遠ざかっています 0:01:14.000,0:01:16.000 さらに遠い銀河を見ると 0:01:16.000,0:01:18.000 もっと速く遠ざかっています 0:01:18.000,0:01:20.000 宇宙は膨張しているということです 0:01:20.000,0:01:22.000 つまり 過去の銀河はお互い 0:01:22.000,0:01:24.000 もっと近かったということです 0:01:24.000,0:01:26.000 昔の宇宙は今より密度が高く 0:01:26.000,0:01:28.000 温度も高かったのです 0:01:28.000,0:01:30.000 物を圧縮すると温度が上がります 0:01:30.000,0:01:32.000 これはそれなりに理解できます 0:01:32.000,0:01:34.000 あまり理解できないのは 0:01:34.000,0:01:37.000 初期のビッグバンに近い頃の宇宙が 0:01:37.000,0:01:39.000 非常に均一的だったことです 0:01:39.000,0:01:41.000 驚くことでないと思うかもしれません 0:01:41.000,0:01:43.000 この会場の空気はとても均一的です 0:01:43.000,0:01:46.000 「物は自然に均一化するのでは」と言うかもしれません 0:01:46.000,0:01:49.000 でもビッグバンの頃の状態はこの会場の空気の状態とは 0:01:49.000,0:01:51.000 非常に異なっていました 0:01:51.000,0:01:53.000 特に物体の密度はもっと高く 0:01:53.000,0:01:55.000 重力が物体を引きつける働きは 0:01:55.000,0:01:57.000 ビッグバン直前はもっと強力でした 0:01:57.000,0:01:59.000 考えてみてください 0:01:59.000,0:02:01.000 宇宙には1千億の銀河があり 0:02:01.000,0:02:03.000 それぞれ1千億の星があるのです 0:02:03.000,0:02:06.000 その1千億の銀河が最初の頃は 0:02:06.000,0:02:09.000 このくらいの大きさに圧縮されていたのです 0:02:09.000,0:02:11.000 実際初期にはこの大きさでした 0:02:11.000,0:02:13.000 その圧縮をどう行うか考えてみると 0:02:13.000,0:02:15.000 完璧でなくてはならず 0:02:15.000,0:02:17.000 ほんの少しでも原子の分布が 0:02:17.000,0:02:19.000 不均等な場所があるとダメです 0:02:19.000,0:02:22.000 あれば重力に引き込まれ 巨大なブラックホールと 0:02:22.000,0:02:24.000 なっていたはずだからです 0:02:24.000,0:02:27.000 初期の宇宙をしっかり均等に保つのは簡単ではありません 0:02:27.000,0:02:29.000 繊細な調節が必要です 0:02:29.000,0:02:31.000 これは初期の宇宙が無作為に 0:02:31.000,0:02:33.000 選択されたのでないことを示唆します 0:02:33.000,0:02:35.000 何かがそうさせたのです 0:02:35.000,0:02:37.000 それが何か知りたいのです 0:02:37.000,0:02:40.000 これに対する理解の一部はオーストリアの物理学者 0:02:40.000,0:02:43.000 ルートヴィッヒ・ボルツマンが19世紀に提示しました 0:02:43.000,0:02:46.000 そしてエントロピーの理解を深めてくれました 0:02:46.000,0:02:48.000 エントロピーは聞いたことがありますね 0:02:48.000,0:02:51.000 ある体系における不確定さ 乱雑さ 無秩序さです 0:02:51.000,0:02:53.000 ボルツマンは方程式を作り― 0:02:53.000,0:02:55.000 彼の墓石に刻まれていますが― 0:02:55.000,0:02:57.000 エントロピーを見事に数量化しました 0:02:57.000,0:02:59.000 基本的にはエントロピーとは 0:02:59.000,0:03:01.000 ある体系の構成物質を 0:03:01.000,0:03:04.000 マクロ的には同じに見える状態で幾通り 0:03:04.000,0:03:06.000 並び替えられるかです 0:03:06.000,0:03:08.000 この会場には空気がありますが 0:03:08.000,0:03:11.000 私たちに個々の原子は見分けられません 0:03:11.000,0:03:13.000 低エントロピーな構造は 0:03:13.000,0:03:15.000 外見がそう見える並べ方が少ないもので 0:03:15.000,0:03:17.000 高エントロピーの構造は 0:03:17.000,0:03:19.000 外見がそう見える並べ方が多いものです 0:03:19.000,0:03:21.000 これは非常に重要な見識です 0:03:21.000,0:03:23.000 熱力学第二法則の 0:03:23.000,0:03:25.000 説明に役立つからです 0:03:25.000,0:03:28.000 この法則によると 宇宙のエントロピーは増加します 0:03:28.000,0:03:30.000 隔離された宇宙の片隅もそうです 0:03:30.000,0:03:32.000 なぜ増加するかと言うと 0:03:32.000,0:03:35.000 単純に 低エントロピーより高エントロピーとなる 0:03:35.000,0:03:37.000 状態の方が多いからです 0:03:37.000,0:03:39.000 これは素晴らしい見識ですが 0:03:39.000,0:03:41.000 欠けているものがあります 0:03:41.000,0:03:43.000 エントロピーが増加する見識は 0:03:43.000,0:03:46.000 いわゆる「時間の矢」の背景にあるものです 0:03:46.000,0:03:48.000 過去と未来の違いです 0:03:48.000,0:03:50.000 過去と未来の間にある 0:03:50.000,0:03:52.000 違いのすべては 0:03:52.000,0:03:54.000 エントロピーの増加のため起こります 0:03:54.000,0:03:57.000 過去を思い出せても未来は思い出せないという事実 0:03:57.000,0:04:00.000 人は生まれ 生き 死ぬという事実 0:04:00.000,0:04:02.000 常にこの順番であること これらは 0:04:02.000,0:04:04.000 エントロピーが増加しているからです 0:04:04.000,0:04:06.000 ボルツマンはエントロピーが低いものが 0:04:06.000,0:04:08.000 高くなるのは全く自然だと説明しました 0:04:08.000,0:04:11.000 高エントロピーの形の方が多いからです 0:04:11.000,0:04:13.000 でも説明されなかったのは 0:04:13.000,0:04:16.000 エントロピーがなぜ最初の時点で低いのかということです 0:04:16.000,0:04:18.000 宇宙のエントロピーが低かったのは 0:04:18.000,0:04:20.000 初期の宇宙が非常に 0:04:20.000,0:04:22.000 均一的だった事実を反映するものです 0:04:22.000,0:04:24.000 これを理解したいのです 0:04:24.000,0:04:26.000 それが宇宙学者の使命です 0:04:26.000,0:04:28.000 残念なことに この課題は実際 0:04:28.000,0:04:30.000 十分に検討されているものでありません 0:04:30.000,0:04:32.000 「取り組んでいる課題は何ですか?」と 0:04:32.000,0:04:34.000 近代の宇宙学者に聞いても 0:04:34.000,0:04:36.000 最初に挙げられたりしません 0:04:36.000,0:04:38.000 これが課題であると理解した1人は 0:04:38.000,0:04:40.000 リチャード・ファインマンでした 0:04:40.000,0:04:42.000 50年前に様々な講座を教え 0:04:42.000,0:04:44.000 のちに「物理法則の特性」として 0:04:44.000,0:04:46.000 出版された人気の講義も教えました 0:04:46.000,0:04:48.000 Caltechの学部生向けの講義が 0:04:48.000,0:04:50.000 「ファインマン物理学」となったり 0:04:50.000,0:04:52.000 Caltechの院生向けの講義が 0:04:52.000,0:04:54.000 「ファインマン重力学」となりました 0:04:54.000,0:04:57.000 彼はこれら全部の本と講義で 0:04:57.000,0:04:59.000 次の疑問を強調しました: 0:04:59.000,0:05:02.000 初期の宇宙のエントロピーがこれほど小さかったのはなぜだ? 0:05:02.000,0:05:04.000 口真似はしませんが こう言いました 0:05:04.000,0:05:07.000 「なぜか宇宙のエントロピーは一時期 0:05:07.000,0:05:10.000 そのエネルギー量に対して非常に低かったのだが 0:05:10.000,0:05:12.000 その後高くなったのである 0:05:12.000,0:05:15.000 宇宙の歴史の始まりの謎がさらに解かれて 0:05:15.000,0:05:18.000 臆測から理解となるまで 0:05:18.000,0:05:20.000 この時間の方向性を完全に 0:05:20.000,0:05:22.000 理解することはできない」 0:05:22.000,0:05:24.000 ですからこれが私たちの使命です 0:05:24.000,0:05:26.000 50年前の話ですから「さすがに 0:05:26.000,0:05:28.000 もう解明しただろう」と思うでしょう 0:05:28.000,0:05:30.000 でも解明していません 0:05:30.000,0:05:32.000 この課題は解明に近づく代わりに 0:05:32.000,0:05:34.000 遠ざかりました 0:05:34.000,0:05:36.000 宇宙について知られていなかった 0:05:36.000,0:05:39.000 重要なことが1998年に明らかになったからです 0:05:39.000,0:05:41.000 宇宙は加速していたのです 0:05:41.000,0:05:43.000 膨張だけではありませんでした 0:05:43.000,0:05:45.000 銀河を見ると遠ざかっています 0:05:45.000,0:05:47.000 でも10億年後に再び見たら 0:05:47.000,0:05:50.000 もっと速く遠ざかっているのです 0:05:50.000,0:05:53.000 個々の銀河は加速して私たちから遠ざかっています 0:05:53.000,0:05:55.000 宇宙は加速しているわけです 0:05:55.000,0:05:57.000 初期の宇宙の低エントロピーと違い 0:05:57.000,0:05:59.000 解明はしていなくても この件には 0:05:59.000,0:06:01.000 少なくとも優れた学説があり 0:06:01.000,0:06:03.000 その説が正しければ説明もつきます 0:06:03.000,0:06:05.000 これはダークエネルギーの学説で 0:06:05.000,0:06:08.000 何もない空間そのものにエネルギーがあるという説です 0:06:08.000,0:06:11.000 空間の隅々まで 0:06:11.000,0:06:13.000 物質があってもなくても 0:06:13.000,0:06:15.000 粒子 物質 放射物などの有無に限らず 0:06:15.000,0:06:18.000 空間そのものにエネルギーがあるということです 0:06:18.000,0:06:20.000 アインシュタインによると 0:06:20.000,0:06:23.000 このエネルギーが宇宙を押しているとのことです 0:06:23.000,0:06:25.000 銀河を押し離す 0:06:25.000,0:06:27.000 果てしない力積なのです 0:06:27.000,0:06:30.000 これはダークエネルギーは物質や放射物と違い 0:06:30.000,0:06:33.000 宇宙が膨張しても密度が下がらないからです 0:06:33.000,0:06:35.000 たとえ宇宙がどんどん広くなっても 0:06:35.000,0:06:37.000 1立方センチの空間にあるエネルギー量は 0:06:37.000,0:06:39.000 変わらないのです 0:06:39.000,0:06:42.000 これは今後宇宙がどうなるかに対して 0:06:42.000,0:06:45.000 重要な意味合いを持ちます 0:06:45.000,0:06:47.000 まず 宇宙は永遠に膨張します 0:06:47.000,0:06:49.000 私がみなさんの年齢だった頃は 0:06:49.000,0:06:51.000 宇宙がどうなるのか分かっておらず 0:06:51.000,0:06:54.000 未来には再収縮すると思う人もいました 0:06:54.000,0:06:56.000 アインシュタインはこの考えが好きでした 0:06:56.000,0:06:59.000 でも尽きることのないダークエネルギーがあるのなら 0:06:59.000,0:07:02.000 宇宙はただ永遠に膨張し続けます 0:07:02.000,0:07:04.000 過去は140億年 0:07:04.000,0:07:06.000 犬年齢でも1千億年 0:07:06.000,0:07:09.000 でも未来の年数は無限なのです 0:07:09.000,0:07:12.000 一方 私たちからはどうしても 0:07:12.000,0:07:14.000 宇宙には限りがあるように見えます 0:07:14.000,0:07:16.000 有限かも無限かもしれませんが 0:07:16.000,0:07:18.000 宇宙は加速しているので 0:07:18.000,0:07:20.000 今までもこれからも私たちが 0:07:20.000,0:07:22.000 目にすることのない部分があります 0:07:22.000,0:07:24.000 宇宙で手が届くのは地平線に囲まれた 0:07:24.000,0:07:26.000 限られた領域だけだからです 0:07:26.000,0:07:28.000 ですから時間が永遠でも 0:07:28.000,0:07:30.000 私たちの宇宙は限られています 0:07:30.000,0:07:33.000 最後に 何もない空間にも温度があります 0:07:33.000,0:07:35.000 70年代にスティーブン・ホーキングが 0:07:35.000,0:07:37.000 ブラックホールは暗黒に見えても 0:07:37.000,0:07:39.000 量子力学を考慮すると 0:07:39.000,0:07:41.000 放射線を放出していると言いました 0:07:41.000,0:07:44.000 ブラックホール周辺の時空の歪みが 0:07:44.000,0:07:47.000 量子力学的な揺らぎを生み出し 0:07:47.000,0:07:49.000 放射線が放出されるのです 0:07:49.000,0:07:52.000 ホーキングとゲリー・ギボンスの非常に似た計算によると 0:07:52.000,0:07:55.000 ダークエネルギーが何もない空間にあると 0:07:55.000,0:07:58.000 宇宙全体が放射線を発するとのことです 0:07:58.000,0:08:00.000 何もない空間のエネルギーが 0:08:00.000,0:08:02.000 量子的揺らぎを引き起こすのです 0:08:02.000,0:08:04.000 つまり宇宙が永遠に続いて 0:08:04.000,0:08:07.000 平凡な物質と放射線の密度が下がっても 0:08:07.000,0:08:09.000 一定の放射物や熱揺動は 0:08:09.000,0:08:11.000 何もない空間にでも 0:08:11.000,0:08:13.000 存在し続けるのです 0:08:13.000,0:08:15.000 つまり宇宙は 0:08:15.000,0:08:17.000 永遠に無くならない気体が入った 0:08:17.000,0:08:19.000 箱のようなものだということです 0:08:19.000,0:08:21.000 だとしたらどうなるのか? 0:08:21.000,0:08:24.000 これついてはボルツマンが19世紀に研究しています 0:08:24.000,0:08:27.000 彼は「低エントロピーより高エントロピーの方が 0:08:27.000,0:08:29.000 多くのバリエーションがあるから 0:08:29.000,0:08:32.000 宇宙のエントロピーは増加する」と言いました 0:08:32.000,0:08:35.000 でもこれは確率的な話です 0:08:35.000,0:08:37.000 たぶん増加するだろうし 0:08:37.000,0:08:39.000 その確率は非常に高いので 0:08:39.000,0:08:41.000 心配することではありません 0:08:41.000,0:08:45.000 会場の空気が1カ所に集まって私たちを窒息させるようなことは 0:08:45.000,0:08:47.000 まずあり得ないことです 0:08:47.000,0:08:49.000 ただドアが閉鎖され 0:08:49.000,0:08:51.000 永遠に出られないとしたら 0:08:51.000,0:08:53.000 いずれ起こることです 0:08:53.000,0:08:55.000 起こり得ることすべて 0:08:55.000,0:08:58.000 会場内の分子の構造で可能なものすべてが 0:08:58.000,0:09:00.000 最終的には起こるのです 0:09:00.000,0:09:03.000 そこでボルツマンは「熱平衡である宇宙から始まったと 0:09:03.000,0:09:05.000 することもできる」と言いました 0:09:05.000,0:09:08.000 彼はビッグバンや宇宙の膨張について知りませんでした 0:09:08.000,0:09:11.000 空間と時間は ニュートンが説明した通り 0:09:11.000,0:09:13.000 不変で永遠だと思っていました 0:09:13.000,0:09:15.000 ですから彼は自然界では 0:09:15.000,0:09:18.000 空気の分子があらゆる場所に均等に 0:09:18.000,0:09:20.000 広がっているのだと思っていました 0:09:20.000,0:09:23.000 でもボルツマンの見解では 待っていれば 0:09:23.000,0:09:26.000 いずれこれらの分子のランダムな揺動が 0:09:26.000,0:09:28.000 低エントロピーな状態を 0:09:28.000,0:09:30.000 時々作ると分かっています 0:09:30.000,0:09:32.000 もちろんその後自然に 0:09:32.000,0:09:34.000 元通り広がります エントロピーが 0:09:34.000,0:09:36.000 常に増加する必要はなく 0:09:36.000,0:09:39.000 揺動により低エントロピーなもっと秩序ある状態に 0:09:39.000,0:09:41.000 なることもあるのです 0:09:41.000,0:09:43.000 それが本当ならどうなるだろうと 0:09:43.000,0:09:45.000 ボルツマンは非常に近代的な 0:09:45.000,0:09:47.000 2つのアイデアを生み出しました 0:09:47.000,0:09:50.000 多元宇宙論と人間原理です 0:09:50.000,0:09:52.000 熱平衡で問題なのは この状態で 0:09:52.000,0:09:54.000 人間は生きていけないことです 0:09:54.000,0:09:57.000 生命そのものが「時間の矢」に依存しているからです 0:09:57.000,0:09:59.000 情報を処理することも 0:09:59.000,0:10:01.000 代謝や歩いたりしゃべったりも 0:10:01.000,0:10:03.000 熱平衡にいたら不可能です 0:10:03.000,0:10:05.000 もし非常に広大な宇宙があり 0:10:05.000,0:10:07.000 その無限に広がる宇宙で粒子が 0:10:07.000,0:10:09.000 ランダムにぶつかり合っているなら 0:10:09.000,0:10:12.000 低エントロピー状態への小さな揺動と復元は 0:10:12.000,0:10:14.000 時々起こります 0:10:14.000,0:10:16.000 でも大きな揺動もあります 0:10:16.000,0:10:18.000 まれに惑星を作ったり 0:10:18.000,0:10:20.000 恒星や銀河や 0:10:20.000,0:10:22.000 1千億の銀河を作ったりします 0:10:22.000,0:10:24.000 そこでボルツマンは 0:10:24.000,0:10:27.000 我々は多元宇宙の一部で生きているのだと言いました 0:10:27.000,0:10:30.000 揺動する粒子がある非常に広い領域の中で 0:10:30.000,0:10:32.000 生命が存在できる部分 つまり 0:10:32.000,0:10:34.000 エントロピーが低い領域です 0:10:34.000,0:10:37.000 私たちの宇宙は たまに起こる現象の 0:10:37.000,0:10:39.000 1つなのかもしれません 0:10:39.000,0:10:41.000 ここで皆さんへの宿題は 0:10:41.000,0:10:43.000 これが何を意味するか熟考することです 0:10:43.000,0:10:45.000 カール・セーガンが 0:10:45.000,0:10:47.000 「アップルパイを作るには 0:10:47.000,0:10:50.000 まず宇宙の創造が必要だ」と言ったのは有名です 0:10:50.000,0:10:52.000 でもそれは違います 0:10:52.000,0:10:55.000 ボルツマンの説だと アップルパイを作りたければ 0:10:55.000,0:10:58.000 原子のランダムな動きがアップルパイを作るのを 0:10:58.000,0:11:00.000 待てばいいだけとなります 0:11:00.000,0:11:02.000 こうなる確率の方が 0:11:02.000,0:11:04.000 原子がランダムに動いて 0:11:04.000,0:11:06.000 りんご林を作り 0:11:06.000,0:11:08.000 砂糖やオーブンを作って 0:11:08.000,0:11:10.000 アップルパイを作るより高いのです 0:11:10.000,0:11:13.000 ですからこの見方から予測ができます 0:11:13.000,0:11:15.000 その予測はと言うと 0:11:15.000,0:11:18.000 私たちは最小の揺動によってを創られたということです 0:11:18.000,0:11:21.000 たとえ皆さんがこの会場は本当に存在し 0:11:21.000,0:11:23.000 自分たちも存在すると思っていて 0:11:23.000,0:11:25.000 外にはCaltechがあり米国があり 0:11:25.000,0:11:27.000 天の川銀河というものがあるという 0:11:27.000,0:11:31.000 記憶のみならず印象を持っていても 0:11:31.000,0:11:34.000 これらのイメージがランダムに皆さんの脳で起こる方が 0:11:34.000,0:11:36.000 原子がランダムに揺動して 0:11:36.000,0:11:39.000 Caltechや米国や銀河系を作るより簡単なのです 0:11:39.000,0:11:41.000 つまりありがたいことに 0:11:41.000,0:11:44.000 この理論はおかしいわけです 正しくないのです 0:11:44.000,0:11:47.000 この説によると私たちは最小の揺動でなくてはならないのです 0:11:47.000,0:11:49.000 私たちの銀河系が例外だったとしても 0:11:49.000,0:11:51.000 1千億の他の銀河はあり得ないのです 0:11:51.000,0:11:53.000 ファインマンもこれを理解していました 0:11:53.000,0:11:57.000 彼は言いました 「世界は揺動によるものだという仮説を立てて 0:11:57.000,0:11:59.000 得られる予測によれば 0:11:59.000,0:12:01.000 世界の未知の部分に目を向けたら 0:12:01.000,0:12:03.000 そこに見えるものとは違う 0:12:03.000,0:12:05.000 高エントロピーな混沌状態があるはずだ」 0:12:05.000,0:12:07.000 「我々の秩序が揺動によるものなら 0:12:07.000,0:12:09.000 既に見られる以外の秩序は想定できない 0:12:09.000,0:12:13.000 よって 宇宙は揺動によるものではないと結論できる」 0:12:13.000,0:12:16.000 それは分かりました では正しい答えは何なのか? 0:12:16.000,0:12:18.000 宇宙が揺動によるものでないなら 0:12:18.000,0:12:21.000 宇宙の初期はなぜ低エントロピーだったのか? 0:12:21.000,0:12:24.000 お答えしたいのですが時間がありません 0:12:24.000,0:12:26.000 (笑) 0:12:26.000,0:12:28.000 説明されている宇宙に対し 0:12:28.000,0:12:30.000 実際に存在する宇宙はこうです 0:12:30.000,0:12:32.000 この図は見せましたね 0:12:32.000,0:12:34.000 100億年間 宇宙は膨張してきて 0:12:34.000,0:12:36.000 冷却しつつあります 0:12:36.000,0:12:38.000 でも宇宙の未来について分かってきて 0:12:38.000,0:12:40.000 もっと説明できます 0:12:40.000,0:12:42.000 ダークエネルギーが存続すれば 0:12:42.000,0:12:45.000 恒星は核エネルギーを使い尽くして燃焼を止め 0:12:45.000,0:12:47.000 ブラックホールに呑み込まれます 0:12:47.000,0:12:49.000 ブラックホール以外何もない 0:12:49.000,0:12:51.000 そんな宇宙に住むことになります 0:12:51.000,0:12:55.000 この宇宙は10の100乗年間続きます 0:12:55.000,0:12:57.000 今までの歴史よりずっと長く続きます 0:12:57.000,0:12:59.000 未来は過去よりもっと長いのです 0:12:59.000,0:13:01.000 でもブラックホールも永遠でなく 0:13:01.000,0:13:03.000 蒸発して 0:13:03.000,0:13:05.000 何もない空間だけが残ります 0:13:05.000,0:13:09.000 この何もない空間は基本的に永遠に続きます 0:13:09.000,0:13:12.000 でもお気づきのように何もない空間は放射物を発し 0:13:12.000,0:13:14.000 実際に熱揺動があります 0:13:14.000,0:13:16.000 そして何もない空間の 0:13:16.000,0:13:18.000 自由度内で可能な 0:13:18.000,0:13:21.000 全ての組み合わせを繰り返すのです 0:13:21.000,0:13:23.000 つまり永遠であっても 0:13:23.000,0:13:25.000 宇宙で起こりうることの 0:13:25.000,0:13:27.000 数は限られているわけです 0:13:27.000,0:13:29.000 10の10乗の120乗年の間に 0:13:29.000,0:13:32.000 すべてのことが起こります 0:13:32.000,0:13:34.000 そこで2つ問題です 0:13:34.000,0:13:37.000 問1:宇宙が10の10乗の120乗年続くのなら 0:13:37.000,0:13:39.000 なぜ私たちは最初の140億年の 0:13:39.000,0:13:42.000 ビッグバンの残光のある 0:13:42.000,0:13:45.000 暖かい快適な環境に生まれたのか? 0:13:45.000,0:13:47.000 なぜ何もない空間にいないのか? 0:13:47.000,0:13:49.000 「生命があり得ないから」と 0:13:49.000,0:13:51.000 言うかもしれませんが違います 0:13:51.000,0:13:53.000 無から生まれた揺動であり得るのに 0:13:53.000,0:13:55.000 皆さんがそうでないのはなぜ? 0:13:55.000,0:13:58.000 これも宿題です 0:13:58.000,0:14:00.000 ですから私にも答えは分かりません 0:14:00.000,0:14:02.000 私の気に入っている仮説を挙げます 0:14:02.000,0:14:05.000 「これはただこういうもので 説明はできない 0:14:05.000,0:14:07.000 これは宇宙の単なる真実だから 0:14:07.000,0:14:10.000 ただ受け入れて疑問を持つのはやめるべき」 0:14:11.000,0:14:13.000 または 「ビッグバンは 0:14:13.000,0:14:15.000 宇宙の始まりではないかも」です 0:14:15.000,0:14:18.000 割れてない卵は低エントロピーな構造です 0:14:18.000,0:14:20.000 でも冷蔵庫を開けて 0:14:20.000,0:14:22.000 「こんな低エントロピーなものが 0:14:22.000,0:14:24.000 冷蔵庫にあるなんて!」とは言いません 0:14:24.000,0:14:27.000 これは卵が閉鎖系でないからです 0:14:27.000,0:14:29.000 ニワトリが卵を産むからです 0:14:29.000,0:14:33.000 宇宙も宇宙版のニワトリから生まれるのかもしれません 0:14:33.000,0:14:35.000 私たちの宇宙を 0:14:35.000,0:14:38.000 低エントロピーな形で産むような 0:14:38.000,0:14:40.000 物理の法則に則った 0:14:40.000,0:14:42.000 自然な何かがあるのかもしれません 0:14:42.000,0:14:44.000 もしそうなら何回も起こっている筈で 0:14:44.000,0:14:47.000 私たちはもっと大きな多元宇宙の一部なわけです 0:14:47.000,0:14:49.000 これが私の好きな説です 0:14:49.000,0:14:52.000 主催者に大胆な推測で締めくくるよう言われましたが 0:14:52.000,0:14:54.000 私の大胆な推測は 0:14:54.000,0:14:57.000 「歴史が私の仮説を完全に立証するだろう」です 0:14:57.000,0:14:59.000 そして50年後には 0:14:59.000,0:15:02.000 私の現在の突飛なアイデアが事実として 0:15:02.000,0:15:05.000 科学やその他の分野で認められているということです 0:15:05.000,0:15:07.000 人々は私たちの小さな宇宙は 0:15:07.000,0:15:10.000 より大きな多元宇宙のほんの一部だと認めるでしょう 0:15:10.000,0:15:13.000 さらにはビッグバンで何が起こったか 0:15:13.000,0:15:15.000 理論として理解し 観察との比較が 0:15:15.000,0:15:17.000 できるようになるでしょう 0:15:17.000,0:15:19.000 これは予測で間違っているかもしれません 0:15:19.000,0:15:21.000 でも私たちは人類として 0:15:21.000,0:15:23.000 宇宙がどんなものか 0:15:23.000,0:15:26.000 どうしてこうなったのか 長い間考えてきました 0:15:26.000,0:15:29.000 いつか答えが分かるかもしれないと思うとワクワクします 0:15:29.000,0:15:31.000 ありがとう 0:15:31.000,0:15:33.000 (拍手)