1 00:00:00,000 --> 00:00:02,000 宇宙は 2 00:00:02,000 --> 00:00:04,000 実に広大です 3 00:00:04,000 --> 00:00:07,000 私たちは銀河の1つ 天の川銀河にいます 4 00:00:07,000 --> 00:00:10,000 天の川銀河には約1千億の星があります 5 00:00:10,000 --> 00:00:12,000 カメラを空のどこかに向けて 6 00:00:12,000 --> 00:00:14,000 シャッターを 7 00:00:14,000 --> 00:00:16,000 開けたままにしておくだけで 8 00:00:16,000 --> 00:00:19,000 カメラがハッブル宇宙望遠鏡に繋がっていればですが 9 00:00:19,000 --> 00:00:21,000 このようなものが見えます 10 00:00:21,000 --> 00:00:24,000 これらの小さな塊のそれぞれが 11 00:00:24,000 --> 00:00:26,000 私たちの銀河系程の大きさの銀河で 12 00:00:26,000 --> 00:00:29,000 1つの塊ごとに1千億の星があります 13 00:00:29,000 --> 00:00:32,000 観測できる限りの宇宙には 14 00:00:32,000 --> 00:00:34,000 大体1千億の銀河があります 15 00:00:34,000 --> 00:00:36,000 覚える数字は「1千億」だけです 16 00:00:36,000 --> 00:00:39,000 ビッグバンから現在の宇宙の年齢は 17 00:00:39,000 --> 00:00:41,000 犬年齢で言う1千億年です 18 00:00:41,000 --> 00:00:43,000 (笑) 19 00:00:43,000 --> 00:00:46,000 宇宙での人間の身分が分かります 20 00:00:46,000 --> 00:00:48,000 このような非常に美しい写真は 21 00:00:48,000 --> 00:00:50,000 見とれるだけでもかまいません 22 00:00:50,000 --> 00:00:53,000 銀河の写真などなかった頃に これを本当に楽しめるまで 23 00:00:53,000 --> 00:00:56,000 アフリカ南部の草原にいた私たちの祖先を順応させ 24 00:00:56,000 --> 00:00:58,000 進化させた進化の要因は 25 00:00:58,000 --> 00:01:00,000 何だろうとよく考えます 26 00:01:00,000 --> 00:01:02,000 でも同時に理解もしたいのです 27 00:01:02,000 --> 00:01:06,000 宇宙学者として「なぜ宇宙はこうなのだ?」と聞きたいのです 28 00:01:06,000 --> 00:01:09,000 大きなヒントの1つは宇宙が時とともに変化していることです 29 00:01:09,000 --> 00:01:12,000 銀河の1つをとってその速度を測ると 30 00:01:12,000 --> 00:01:14,000 私たちから遠ざかっています 31 00:01:14,000 --> 00:01:16,000 さらに遠い銀河を見ると 32 00:01:16,000 --> 00:01:18,000 もっと速く遠ざかっています 33 00:01:18,000 --> 00:01:20,000 宇宙は膨張しているということです 34 00:01:20,000 --> 00:01:22,000 つまり 過去の銀河はお互い 35 00:01:22,000 --> 00:01:24,000 もっと近かったということです 36 00:01:24,000 --> 00:01:26,000 昔の宇宙は今より密度が高く 37 00:01:26,000 --> 00:01:28,000 温度も高かったのです 38 00:01:28,000 --> 00:01:30,000 物を圧縮すると温度が上がります 39 00:01:30,000 --> 00:01:32,000 これはそれなりに理解できます 40 00:01:32,000 --> 00:01:34,000 あまり理解できないのは 41 00:01:34,000 --> 00:01:37,000 初期のビッグバンに近い頃の宇宙が 42 00:01:37,000 --> 00:01:39,000 非常に均一的だったことです 43 00:01:39,000 --> 00:01:41,000 驚くことでないと思うかもしれません 44 00:01:41,000 --> 00:01:43,000 この会場の空気はとても均一的です 45 00:01:43,000 --> 00:01:46,000 「物は自然に均一化するのでは」と言うかもしれません 46 00:01:46,000 --> 00:01:49,000 でもビッグバンの頃の状態はこの会場の空気の状態とは 47 00:01:49,000 --> 00:01:51,000 非常に異なっていました 48 00:01:51,000 --> 00:01:53,000 特に物体の密度はもっと高く 49 00:01:53,000 --> 00:01:55,000 重力が物体を引きつける働きは 50 00:01:55,000 --> 00:01:57,000 ビッグバン直前はもっと強力でした 51 00:01:57,000 --> 00:01:59,000 考えてみてください 52 00:01:59,000 --> 00:02:01,000 宇宙には1千億の銀河があり 53 00:02:01,000 --> 00:02:03,000 それぞれ1千億の星があるのです 54 00:02:03,000 --> 00:02:06,000 その1千億の銀河が最初の頃は 55 00:02:06,000 --> 00:02:09,000 このくらいの大きさに圧縮されていたのです 56 00:02:09,000 --> 00:02:11,000 実際初期にはこの大きさでした 57 00:02:11,000 --> 00:02:13,000 その圧縮をどう行うか考えてみると 58 00:02:13,000 --> 00:02:15,000 完璧でなくてはならず 59 00:02:15,000 --> 00:02:17,000 ほんの少しでも原子の分布が 60 00:02:17,000 --> 00:02:19,000 不均等な場所があるとダメです 61 00:02:19,000 --> 00:02:22,000 あれば重力に引き込まれ 巨大なブラックホールと 62 00:02:22,000 --> 00:02:24,000 なっていたはずだからです 63 00:02:24,000 --> 00:02:27,000 初期の宇宙をしっかり均等に保つのは簡単ではありません 64 00:02:27,000 --> 00:02:29,000 繊細な調節が必要です 65 00:02:29,000 --> 00:02:31,000 これは初期の宇宙が無作為に 66 00:02:31,000 --> 00:02:33,000 選択されたのでないことを示唆します 67 00:02:33,000 --> 00:02:35,000 何かがそうさせたのです 68 00:02:35,000 --> 00:02:37,000 それが何か知りたいのです 69 00:02:37,000 --> 00:02:40,000 これに対する理解の一部はオーストリアの物理学者 70 00:02:40,000 --> 00:02:43,000 ルートヴィッヒ・ボルツマンが19世紀に提示しました 71 00:02:43,000 --> 00:02:46,000 そしてエントロピーの理解を深めてくれました 72 00:02:46,000 --> 00:02:48,000 エントロピーは聞いたことがありますね 73 00:02:48,000 --> 00:02:51,000 ある体系における不確定さ 乱雑さ 無秩序さです 74 00:02:51,000 --> 00:02:53,000 ボルツマンは方程式を作り― 75 00:02:53,000 --> 00:02:55,000 彼の墓石に刻まれていますが― 76 00:02:55,000 --> 00:02:57,000 エントロピーを見事に数量化しました 77 00:02:57,000 --> 00:02:59,000 基本的にはエントロピーとは 78 00:02:59,000 --> 00:03:01,000 ある体系の構成物質を 79 00:03:01,000 --> 00:03:04,000 マクロ的には同じに見える状態で幾通り 80 00:03:04,000 --> 00:03:06,000 並び替えられるかです 81 00:03:06,000 --> 00:03:08,000 この会場には空気がありますが 82 00:03:08,000 --> 00:03:11,000 私たちに個々の原子は見分けられません 83 00:03:11,000 --> 00:03:13,000 低エントロピーな構造は 84 00:03:13,000 --> 00:03:15,000 外見がそう見える並べ方が少ないもので 85 00:03:15,000 --> 00:03:17,000 高エントロピーの構造は 86 00:03:17,000 --> 00:03:19,000 外見がそう見える並べ方が多いものです 87 00:03:19,000 --> 00:03:21,000 これは非常に重要な見識です 88 00:03:21,000 --> 00:03:23,000 熱力学第二法則の 89 00:03:23,000 --> 00:03:25,000 説明に役立つからです 90 00:03:25,000 --> 00:03:28,000 この法則によると 宇宙のエントロピーは増加します 91 00:03:28,000 --> 00:03:30,000 隔離された宇宙の片隅もそうです 92 00:03:30,000 --> 00:03:32,000 なぜ増加するかと言うと 93 00:03:32,000 --> 00:03:35,000 単純に 低エントロピーより高エントロピーとなる 94 00:03:35,000 --> 00:03:37,000 状態の方が多いからです 95 00:03:37,000 --> 00:03:39,000 これは素晴らしい見識ですが 96 00:03:39,000 --> 00:03:41,000 欠けているものがあります 97 00:03:41,000 --> 00:03:43,000 エントロピーが増加する見識は 98 00:03:43,000 --> 00:03:46,000 いわゆる「時間の矢」の背景にあるものです 99 00:03:46,000 --> 00:03:48,000 過去と未来の違いです 100 00:03:48,000 --> 00:03:50,000 過去と未来の間にある 101 00:03:50,000 --> 00:03:52,000 違いのすべては 102 00:03:52,000 --> 00:03:54,000 エントロピーの増加のため起こります 103 00:03:54,000 --> 00:03:57,000 過去を思い出せても未来は思い出せないという事実 104 00:03:57,000 --> 00:04:00,000 人は生まれ 生き 死ぬという事実 105 00:04:00,000 --> 00:04:02,000 常にこの順番であること これらは 106 00:04:02,000 --> 00:04:04,000 エントロピーが増加しているからです 107 00:04:04,000 --> 00:04:06,000 ボルツマンはエントロピーが低いものが 108 00:04:06,000 --> 00:04:08,000 高くなるのは全く自然だと説明しました 109 00:04:08,000 --> 00:04:11,000 高エントロピーの形の方が多いからです 110 00:04:11,000 --> 00:04:13,000 でも説明されなかったのは 111 00:04:13,000 --> 00:04:16,000 エントロピーがなぜ最初の時点で低いのかということです 112 00:04:16,000 --> 00:04:18,000 宇宙のエントロピーが低かったのは 113 00:04:18,000 --> 00:04:20,000 初期の宇宙が非常に 114 00:04:20,000 --> 00:04:22,000 均一的だった事実を反映するものです 115 00:04:22,000 --> 00:04:24,000 これを理解したいのです 116 00:04:24,000 --> 00:04:26,000 それが宇宙学者の使命です 117 00:04:26,000 --> 00:04:28,000 残念なことに この課題は実際 118 00:04:28,000 --> 00:04:30,000 十分に検討されているものでありません 119 00:04:30,000 --> 00:04:32,000 「取り組んでいる課題は何ですか?」と 120 00:04:32,000 --> 00:04:34,000 近代の宇宙学者に聞いても 121 00:04:34,000 --> 00:04:36,000 最初に挙げられたりしません 122 00:04:36,000 --> 00:04:38,000 これが課題であると理解した1人は 123 00:04:38,000 --> 00:04:40,000 リチャード・ファインマンでした 124 00:04:40,000 --> 00:04:42,000 50年前に様々な講座を教え 125 00:04:42,000 --> 00:04:44,000 のちに「物理法則の特性」として 126 00:04:44,000 --> 00:04:46,000 出版された人気の講義も教えました 127 00:04:46,000 --> 00:04:48,000 Caltechの学部生向けの講義が 128 00:04:48,000 --> 00:04:50,000 「ファインマン物理学」となったり 129 00:04:50,000 --> 00:04:52,000 Caltechの院生向けの講義が 130 00:04:52,000 --> 00:04:54,000 「ファインマン重力学」となりました 131 00:04:54,000 --> 00:04:57,000 彼はこれら全部の本と講義で 132 00:04:57,000 --> 00:04:59,000 次の疑問を強調しました: 133 00:04:59,000 --> 00:05:02,000 初期の宇宙のエントロピーがこれほど小さかったのはなぜだ? 134 00:05:02,000 --> 00:05:04,000 口真似はしませんが こう言いました 135 00:05:04,000 --> 00:05:07,000 「なぜか宇宙のエントロピーは一時期 136 00:05:07,000 --> 00:05:10,000 そのエネルギー量に対して非常に低かったのだが 137 00:05:10,000 --> 00:05:12,000 その後高くなったのである 138 00:05:12,000 --> 00:05:15,000 宇宙の歴史の始まりの謎がさらに解かれて 139 00:05:15,000 --> 00:05:18,000 臆測から理解となるまで 140 00:05:18,000 --> 00:05:20,000 この時間の方向性を完全に 141 00:05:20,000 --> 00:05:22,000 理解することはできない」 142 00:05:22,000 --> 00:05:24,000 ですからこれが私たちの使命です 143 00:05:24,000 --> 00:05:26,000 50年前の話ですから「さすがに 144 00:05:26,000 --> 00:05:28,000 もう解明しただろう」と思うでしょう 145 00:05:28,000 --> 00:05:30,000 でも解明していません 146 00:05:30,000 --> 00:05:32,000 この課題は解明に近づく代わりに 147 00:05:32,000 --> 00:05:34,000 遠ざかりました 148 00:05:34,000 --> 00:05:36,000 宇宙について知られていなかった 149 00:05:36,000 --> 00:05:39,000 重要なことが1998年に明らかになったからです 150 00:05:39,000 --> 00:05:41,000 宇宙は加速していたのです 151 00:05:41,000 --> 00:05:43,000 膨張だけではありませんでした 152 00:05:43,000 --> 00:05:45,000 銀河を見ると遠ざかっています 153 00:05:45,000 --> 00:05:47,000 でも10億年後に再び見たら 154 00:05:47,000 --> 00:05:50,000 もっと速く遠ざかっているのです 155 00:05:50,000 --> 00:05:53,000 個々の銀河は加速して私たちから遠ざかっています 156 00:05:53,000 --> 00:05:55,000 宇宙は加速しているわけです 157 00:05:55,000 --> 00:05:57,000 初期の宇宙の低エントロピーと違い 158 00:05:57,000 --> 00:05:59,000 解明はしていなくても この件には 159 00:05:59,000 --> 00:06:01,000 少なくとも優れた学説があり 160 00:06:01,000 --> 00:06:03,000 その説が正しければ説明もつきます 161 00:06:03,000 --> 00:06:05,000 これはダークエネルギーの学説で 162 00:06:05,000 --> 00:06:08,000 何もない空間そのものにエネルギーがあるという説です 163 00:06:08,000 --> 00:06:11,000 空間の隅々まで 164 00:06:11,000 --> 00:06:13,000 物質があってもなくても 165 00:06:13,000 --> 00:06:15,000 粒子 物質 放射物などの有無に限らず 166 00:06:15,000 --> 00:06:18,000 空間そのものにエネルギーがあるということです 167 00:06:18,000 --> 00:06:20,000 アインシュタインによると 168 00:06:20,000 --> 00:06:23,000 このエネルギーが宇宙を押しているとのことです 169 00:06:23,000 --> 00:06:25,000 銀河を押し離す 170 00:06:25,000 --> 00:06:27,000 果てしない力積なのです 171 00:06:27,000 --> 00:06:30,000 これはダークエネルギーは物質や放射物と違い 172 00:06:30,000 --> 00:06:33,000 宇宙が膨張しても密度が下がらないからです 173 00:06:33,000 --> 00:06:35,000 たとえ宇宙がどんどん広くなっても 174 00:06:35,000 --> 00:06:37,000 1立方センチの空間にあるエネルギー量は 175 00:06:37,000 --> 00:06:39,000 変わらないのです 176 00:06:39,000 --> 00:06:42,000 これは今後宇宙がどうなるかに対して 177 00:06:42,000 --> 00:06:45,000 重要な意味合いを持ちます 178 00:06:45,000 --> 00:06:47,000 まず 宇宙は永遠に膨張します 179 00:06:47,000 --> 00:06:49,000 私がみなさんの年齢だった頃は 180 00:06:49,000 --> 00:06:51,000 宇宙がどうなるのか分かっておらず 181 00:06:51,000 --> 00:06:54,000 未来には再収縮すると思う人もいました 182 00:06:54,000 --> 00:06:56,000 アインシュタインはこの考えが好きでした 183 00:06:56,000 --> 00:06:59,000 でも尽きることのないダークエネルギーがあるのなら 184 00:06:59,000 --> 00:07:02,000 宇宙はただ永遠に膨張し続けます 185 00:07:02,000 --> 00:07:04,000 過去は140億年 186 00:07:04,000 --> 00:07:06,000 犬年齢でも1千億年 187 00:07:06,000 --> 00:07:09,000 でも未来の年数は無限なのです 188 00:07:09,000 --> 00:07:12,000 一方 私たちからはどうしても 189 00:07:12,000 --> 00:07:14,000 宇宙には限りがあるように見えます 190 00:07:14,000 --> 00:07:16,000 有限かも無限かもしれませんが 191 00:07:16,000 --> 00:07:18,000 宇宙は加速しているので 192 00:07:18,000 --> 00:07:20,000 今までもこれからも私たちが 193 00:07:20,000 --> 00:07:22,000 目にすることのない部分があります 194 00:07:22,000 --> 00:07:24,000 宇宙で手が届くのは地平線に囲まれた 195 00:07:24,000 --> 00:07:26,000 限られた領域だけだからです 196 00:07:26,000 --> 00:07:28,000 ですから時間が永遠でも 197 00:07:28,000 --> 00:07:30,000 私たちの宇宙は限られています 198 00:07:30,000 --> 00:07:33,000 最後に 何もない空間にも温度があります 199 00:07:33,000 --> 00:07:35,000 70年代にスティーブン・ホーキングが 200 00:07:35,000 --> 00:07:37,000 ブラックホールは暗黒に見えても 201 00:07:37,000 --> 00:07:39,000 量子力学を考慮すると 202 00:07:39,000 --> 00:07:41,000 放射線を放出していると言いました 203 00:07:41,000 --> 00:07:44,000 ブラックホール周辺の時空の歪みが 204 00:07:44,000 --> 00:07:47,000 量子力学的な揺らぎを生み出し 205 00:07:47,000 --> 00:07:49,000 放射線が放出されるのです 206 00:07:49,000 --> 00:07:52,000 ホーキングとゲリー・ギボンスの非常に似た計算によると 207 00:07:52,000 --> 00:07:55,000 ダークエネルギーが何もない空間にあると 208 00:07:55,000 --> 00:07:58,000 宇宙全体が放射線を発するとのことです 209 00:07:58,000 --> 00:08:00,000 何もない空間のエネルギーが 210 00:08:00,000 --> 00:08:02,000 量子的揺らぎを引き起こすのです 211 00:08:02,000 --> 00:08:04,000 つまり宇宙が永遠に続いて 212 00:08:04,000 --> 00:08:07,000 平凡な物質と放射線の密度が下がっても 213 00:08:07,000 --> 00:08:09,000 一定の放射物や熱揺動は 214 00:08:09,000 --> 00:08:11,000 何もない空間にでも 215 00:08:11,000 --> 00:08:13,000 存在し続けるのです 216 00:08:13,000 --> 00:08:15,000 つまり宇宙は 217 00:08:15,000 --> 00:08:17,000 永遠に無くならない気体が入った 218 00:08:17,000 --> 00:08:19,000 箱のようなものだということです 219 00:08:19,000 --> 00:08:21,000 だとしたらどうなるのか? 220 00:08:21,000 --> 00:08:24,000 これついてはボルツマンが19世紀に研究しています 221 00:08:24,000 --> 00:08:27,000 彼は「低エントロピーより高エントロピーの方が 222 00:08:27,000 --> 00:08:29,000 多くのバリエーションがあるから 223 00:08:29,000 --> 00:08:32,000 宇宙のエントロピーは増加する」と言いました 224 00:08:32,000 --> 00:08:35,000 でもこれは確率的な話です 225 00:08:35,000 --> 00:08:37,000 たぶん増加するだろうし 226 00:08:37,000 --> 00:08:39,000 その確率は非常に高いので 227 00:08:39,000 --> 00:08:41,000 心配することではありません 228 00:08:41,000 --> 00:08:45,000 会場の空気が1カ所に集まって私たちを窒息させるようなことは 229 00:08:45,000 --> 00:08:47,000 まずあり得ないことです 230 00:08:47,000 --> 00:08:49,000 ただドアが閉鎖され 231 00:08:49,000 --> 00:08:51,000 永遠に出られないとしたら 232 00:08:51,000 --> 00:08:53,000 いずれ起こることです 233 00:08:53,000 --> 00:08:55,000 起こり得ることすべて 234 00:08:55,000 --> 00:08:58,000 会場内の分子の構造で可能なものすべてが 235 00:08:58,000 --> 00:09:00,000 最終的には起こるのです 236 00:09:00,000 --> 00:09:03,000 そこでボルツマンは「熱平衡である宇宙から始まったと 237 00:09:03,000 --> 00:09:05,000 することもできる」と言いました 238 00:09:05,000 --> 00:09:08,000 彼はビッグバンや宇宙の膨張について知りませんでした 239 00:09:08,000 --> 00:09:11,000 空間と時間は ニュートンが説明した通り 240 00:09:11,000 --> 00:09:13,000 不変で永遠だと思っていました 241 00:09:13,000 --> 00:09:15,000 ですから彼は自然界では 242 00:09:15,000 --> 00:09:18,000 空気の分子があらゆる場所に均等に 243 00:09:18,000 --> 00:09:20,000 広がっているのだと思っていました 244 00:09:20,000 --> 00:09:23,000 でもボルツマンの見解では 待っていれば 245 00:09:23,000 --> 00:09:26,000 いずれこれらの分子のランダムな揺動が 246 00:09:26,000 --> 00:09:28,000 低エントロピーな状態を 247 00:09:28,000 --> 00:09:30,000 時々作ると分かっています 248 00:09:30,000 --> 00:09:32,000 もちろんその後自然に 249 00:09:32,000 --> 00:09:34,000 元通り広がります エントロピーが 250 00:09:34,000 --> 00:09:36,000 常に増加する必要はなく 251 00:09:36,000 --> 00:09:39,000 揺動により低エントロピーなもっと秩序ある状態に 252 00:09:39,000 --> 00:09:41,000 なることもあるのです 253 00:09:41,000 --> 00:09:43,000 それが本当ならどうなるだろうと 254 00:09:43,000 --> 00:09:45,000 ボルツマンは非常に近代的な 255 00:09:45,000 --> 00:09:47,000 2つのアイデアを生み出しました 256 00:09:47,000 --> 00:09:50,000 多元宇宙論と人間原理です 257 00:09:50,000 --> 00:09:52,000 熱平衡で問題なのは この状態で 258 00:09:52,000 --> 00:09:54,000 人間は生きていけないことです 259 00:09:54,000 --> 00:09:57,000 生命そのものが「時間の矢」に依存しているからです 260 00:09:57,000 --> 00:09:59,000 情報を処理することも 261 00:09:59,000 --> 00:10:01,000 代謝や歩いたりしゃべったりも 262 00:10:01,000 --> 00:10:03,000 熱平衡にいたら不可能です 263 00:10:03,000 --> 00:10:05,000 もし非常に広大な宇宙があり 264 00:10:05,000 --> 00:10:07,000 その無限に広がる宇宙で粒子が 265 00:10:07,000 --> 00:10:09,000 ランダムにぶつかり合っているなら 266 00:10:09,000 --> 00:10:12,000 低エントロピー状態への小さな揺動と復元は 267 00:10:12,000 --> 00:10:14,000 時々起こります 268 00:10:14,000 --> 00:10:16,000 でも大きな揺動もあります 269 00:10:16,000 --> 00:10:18,000 まれに惑星を作ったり 270 00:10:18,000 --> 00:10:20,000 恒星や銀河や 271 00:10:20,000 --> 00:10:22,000 1千億の銀河を作ったりします 272 00:10:22,000 --> 00:10:24,000 そこでボルツマンは 273 00:10:24,000 --> 00:10:27,000 我々は多元宇宙の一部で生きているのだと言いました 274 00:10:27,000 --> 00:10:30,000 揺動する粒子がある非常に広い領域の中で 275 00:10:30,000 --> 00:10:32,000 生命が存在できる部分 つまり 276 00:10:32,000 --> 00:10:34,000 エントロピーが低い領域です 277 00:10:34,000 --> 00:10:37,000 私たちの宇宙は たまに起こる現象の 278 00:10:37,000 --> 00:10:39,000 1つなのかもしれません 279 00:10:39,000 --> 00:10:41,000 ここで皆さんへの宿題は 280 00:10:41,000 --> 00:10:43,000 これが何を意味するか熟考することです 281 00:10:43,000 --> 00:10:45,000 カール・セーガンが 282 00:10:45,000 --> 00:10:47,000 「アップルパイを作るには 283 00:10:47,000 --> 00:10:50,000 まず宇宙の創造が必要だ」と言ったのは有名です 284 00:10:50,000 --> 00:10:52,000 でもそれは違います 285 00:10:52,000 --> 00:10:55,000 ボルツマンの説だと アップルパイを作りたければ 286 00:10:55,000 --> 00:10:58,000 原子のランダムな動きがアップルパイを作るのを 287 00:10:58,000 --> 00:11:00,000 待てばいいだけとなります 288 00:11:00,000 --> 00:11:02,000 こうなる確率の方が 289 00:11:02,000 --> 00:11:04,000 原子がランダムに動いて 290 00:11:04,000 --> 00:11:06,000 りんご林を作り 291 00:11:06,000 --> 00:11:08,000 砂糖やオーブンを作って 292 00:11:08,000 --> 00:11:10,000 アップルパイを作るより高いのです 293 00:11:10,000 --> 00:11:13,000 ですからこの見方から予測ができます 294 00:11:13,000 --> 00:11:15,000 その予測はと言うと 295 00:11:15,000 --> 00:11:18,000 私たちは最小の揺動によってを創られたということです 296 00:11:18,000 --> 00:11:21,000 たとえ皆さんがこの会場は本当に存在し 297 00:11:21,000 --> 00:11:23,000 自分たちも存在すると思っていて 298 00:11:23,000 --> 00:11:25,000 外にはCaltechがあり米国があり 299 00:11:25,000 --> 00:11:27,000 天の川銀河というものがあるという 300 00:11:27,000 --> 00:11:31,000 記憶のみならず印象を持っていても 301 00:11:31,000 --> 00:11:34,000 これらのイメージがランダムに皆さんの脳で起こる方が 302 00:11:34,000 --> 00:11:36,000 原子がランダムに揺動して 303 00:11:36,000 --> 00:11:39,000 Caltechや米国や銀河系を作るより簡単なのです 304 00:11:39,000 --> 00:11:41,000 つまりありがたいことに 305 00:11:41,000 --> 00:11:44,000 この理論はおかしいわけです 正しくないのです 306 00:11:44,000 --> 00:11:47,000 この説によると私たちは最小の揺動でなくてはならないのです 307 00:11:47,000 --> 00:11:49,000 私たちの銀河系が例外だったとしても 308 00:11:49,000 --> 00:11:51,000 1千億の他の銀河はあり得ないのです 309 00:11:51,000 --> 00:11:53,000 ファインマンもこれを理解していました 310 00:11:53,000 --> 00:11:57,000 彼は言いました 「世界は揺動によるものだという仮説を立てて 311 00:11:57,000 --> 00:11:59,000 得られる予測によれば 312 00:11:59,000 --> 00:12:01,000 世界の未知の部分に目を向けたら 313 00:12:01,000 --> 00:12:03,000 そこに見えるものとは違う 314 00:12:03,000 --> 00:12:05,000 高エントロピーな混沌状態があるはずだ」 315 00:12:05,000 --> 00:12:07,000 「我々の秩序が揺動によるものなら 316 00:12:07,000 --> 00:12:09,000 既に見られる以外の秩序は想定できない 317 00:12:09,000 --> 00:12:13,000 よって 宇宙は揺動によるものではないと結論できる」 318 00:12:13,000 --> 00:12:16,000 それは分かりました では正しい答えは何なのか? 319 00:12:16,000 --> 00:12:18,000 宇宙が揺動によるものでないなら 320 00:12:18,000 --> 00:12:21,000 宇宙の初期はなぜ低エントロピーだったのか? 321 00:12:21,000 --> 00:12:24,000 お答えしたいのですが時間がありません 322 00:12:24,000 --> 00:12:26,000 (笑) 323 00:12:26,000 --> 00:12:28,000 説明されている宇宙に対し 324 00:12:28,000 --> 00:12:30,000 実際に存在する宇宙はこうです 325 00:12:30,000 --> 00:12:32,000 この図は見せましたね 326 00:12:32,000 --> 00:12:34,000 100億年間 宇宙は膨張してきて 327 00:12:34,000 --> 00:12:36,000 冷却しつつあります 328 00:12:36,000 --> 00:12:38,000 でも宇宙の未来について分かってきて 329 00:12:38,000 --> 00:12:40,000 もっと説明できます 330 00:12:40,000 --> 00:12:42,000 ダークエネルギーが存続すれば 331 00:12:42,000 --> 00:12:45,000 恒星は核エネルギーを使い尽くして燃焼を止め 332 00:12:45,000 --> 00:12:47,000 ブラックホールに呑み込まれます 333 00:12:47,000 --> 00:12:49,000 ブラックホール以外何もない 334 00:12:49,000 --> 00:12:51,000 そんな宇宙に住むことになります 335 00:12:51,000 --> 00:12:55,000 この宇宙は10の100乗年間続きます 336 00:12:55,000 --> 00:12:57,000 今までの歴史よりずっと長く続きます 337 00:12:57,000 --> 00:12:59,000 未来は過去よりもっと長いのです 338 00:12:59,000 --> 00:13:01,000 でもブラックホールも永遠でなく 339 00:13:01,000 --> 00:13:03,000 蒸発して 340 00:13:03,000 --> 00:13:05,000 何もない空間だけが残ります 341 00:13:05,000 --> 00:13:09,000 この何もない空間は基本的に永遠に続きます 342 00:13:09,000 --> 00:13:12,000 でもお気づきのように何もない空間は放射物を発し 343 00:13:12,000 --> 00:13:14,000 実際に熱揺動があります 344 00:13:14,000 --> 00:13:16,000 そして何もない空間の 345 00:13:16,000 --> 00:13:18,000 自由度内で可能な 346 00:13:18,000 --> 00:13:21,000 全ての組み合わせを繰り返すのです 347 00:13:21,000 --> 00:13:23,000 つまり永遠であっても 348 00:13:23,000 --> 00:13:25,000 宇宙で起こりうることの 349 00:13:25,000 --> 00:13:27,000 数は限られているわけです 350 00:13:27,000 --> 00:13:29,000 10の10乗の120乗年の間に 351 00:13:29,000 --> 00:13:32,000 すべてのことが起こります 352 00:13:32,000 --> 00:13:34,000 そこで2つ問題です 353 00:13:34,000 --> 00:13:37,000 問1:宇宙が10の10乗の120乗年続くのなら 354 00:13:37,000 --> 00:13:39,000 なぜ私たちは最初の140億年の 355 00:13:39,000 --> 00:13:42,000 ビッグバンの残光のある 356 00:13:42,000 --> 00:13:45,000 暖かい快適な環境に生まれたのか? 357 00:13:45,000 --> 00:13:47,000 なぜ何もない空間にいないのか? 358 00:13:47,000 --> 00:13:49,000 「生命があり得ないから」と 359 00:13:49,000 --> 00:13:51,000 言うかもしれませんが違います 360 00:13:51,000 --> 00:13:53,000 無から生まれた揺動であり得るのに 361 00:13:53,000 --> 00:13:55,000 皆さんがそうでないのはなぜ? 362 00:13:55,000 --> 00:13:58,000 これも宿題です 363 00:13:58,000 --> 00:14:00,000 ですから私にも答えは分かりません 364 00:14:00,000 --> 00:14:02,000 私の気に入っている仮説を挙げます 365 00:14:02,000 --> 00:14:05,000 「これはただこういうもので 説明はできない 366 00:14:05,000 --> 00:14:07,000 これは宇宙の単なる真実だから 367 00:14:07,000 --> 00:14:10,000 ただ受け入れて疑問を持つのはやめるべき」 368 00:14:11,000 --> 00:14:13,000 または 「ビッグバンは 369 00:14:13,000 --> 00:14:15,000 宇宙の始まりではないかも」です 370 00:14:15,000 --> 00:14:18,000 割れてない卵は低エントロピーな構造です 371 00:14:18,000 --> 00:14:20,000 でも冷蔵庫を開けて 372 00:14:20,000 --> 00:14:22,000 「こんな低エントロピーなものが 373 00:14:22,000 --> 00:14:24,000 冷蔵庫にあるなんて!」とは言いません 374 00:14:24,000 --> 00:14:27,000 これは卵が閉鎖系でないからです 375 00:14:27,000 --> 00:14:29,000 ニワトリが卵を産むからです 376 00:14:29,000 --> 00:14:33,000 宇宙も宇宙版のニワトリから生まれるのかもしれません 377 00:14:33,000 --> 00:14:35,000 私たちの宇宙を 378 00:14:35,000 --> 00:14:38,000 低エントロピーな形で産むような 379 00:14:38,000 --> 00:14:40,000 物理の法則に則った 380 00:14:40,000 --> 00:14:42,000 自然な何かがあるのかもしれません 381 00:14:42,000 --> 00:14:44,000 もしそうなら何回も起こっている筈で 382 00:14:44,000 --> 00:14:47,000 私たちはもっと大きな多元宇宙の一部なわけです 383 00:14:47,000 --> 00:14:49,000 これが私の好きな説です 384 00:14:49,000 --> 00:14:52,000 主催者に大胆な推測で締めくくるよう言われましたが 385 00:14:52,000 --> 00:14:54,000 私の大胆な推測は 386 00:14:54,000 --> 00:14:57,000 「歴史が私の仮説を完全に立証するだろう」です 387 00:14:57,000 --> 00:14:59,000 そして50年後には 388 00:14:59,000 --> 00:15:02,000 私の現在の突飛なアイデアが事実として 389 00:15:02,000 --> 00:15:05,000 科学やその他の分野で認められているということです 390 00:15:05,000 --> 00:15:07,000 人々は私たちの小さな宇宙は 391 00:15:07,000 --> 00:15:10,000 より大きな多元宇宙のほんの一部だと認めるでしょう 392 00:15:10,000 --> 00:15:13,000 さらにはビッグバンで何が起こったか 393 00:15:13,000 --> 00:15:15,000 理論として理解し 観察との比較が 394 00:15:15,000 --> 00:15:17,000 できるようになるでしょう 395 00:15:17,000 --> 00:15:19,000 これは予測で間違っているかもしれません 396 00:15:19,000 --> 00:15:21,000 でも私たちは人類として 397 00:15:21,000 --> 00:15:23,000 宇宙がどんなものか 398 00:15:23,000 --> 00:15:26,000 どうしてこうなったのか 長い間考えてきました 399 00:15:26,000 --> 00:15:29,000 いつか答えが分かるかもしれないと思うとワクワクします 400 00:15:29,000 --> 00:15:31,000 ありがとう 401 00:15:31,000 --> 00:15:33,000 (拍手)